2014年6月30日月曜日

フランス式=フランス流ではない(2)

 前回は「フランスっぽくないバソン」を取り上げましたので、今回は「じゃあフランスっぽいのって、どんなん?」というのを取り上げてみたいと思います。
 
Maurice Allard氏

フランス流と言えば、まずこの人の名前を挙げなくてはいけません。
ビブラートたっぷりの歌い方、サックスに近い音色、ギュイギュイと軋むような早いパッセージ、バリバリ鳴らす低音…小人にとって『フランス流バソン』の代名詞のようなお方です。
 
 
Noël Devos氏

当ブログでたびたび取り上げているDevos氏も『濃い』ですね。遠い異国の地で逆に「フランス度」が濃縮されたんでしょうか?何度聴いても「ホントはバリサクで吹いてるんでしょ?」と思ってしまいます…(笑)
 
 
Fernand Oubradous氏

ちょっと古い録音ですが、有名なOubradous父子の息子さんの方の演奏です。
穏やかに吹いてるな、と思ったらカデンツァで突然“スイッチ入る”のが面白いです(笑)。
 
 
Laurent Lefèvre氏

Lefèvre氏はバソンからファゴットに転向された方。この演奏は「フランス流で吹くためにはフランス式の楽器でなければダメなのか?」という問いに答えてくれます。「フランス流のファゴット」、ありですね!
 
 
さて、現代のバソンの第一人者であるAudin氏をあえて最後に持ってきました。まずは聴いてみて下さい。

Gilbert Audin氏

Audin氏はAllard氏のお弟子さんなんですが、コテコテのフランス流ではなく、どちらかと言うとグローバルな演奏なのではないでしょうか?(フランスの曲ではなく、わざとWeberを貼ってみました。全く違和感ないですよね?)。
フランス人が憂慮すべきは「バソン人口の減少」ではなく、「フランス流奏者の減少」なのかもしれません。
 

 2回に渡って沢山の演奏例を挙げましたが、ひとえに「フランス式の楽器を使う」事と「フランス流の演奏をする」事は<イコール>ではないのだという事が言いたかっただけなんです。「フランス式の楽器でフランス流に演奏する」のがおそらく一般的なのバソンのイメージだと思うんですが、決してそれが全てではないことをご理解いただければと思います。ここを理解しないとウィキペディアのように

『ただ、単にキーシステムの違いというよりも奏法における違いが甚だしく、プロの奏者にとっても、実際上は全く別個の楽器と意識されているようである。』 
ja.wikipedia.org 2013年9月17日 (火) 15:31

といった素っ頓狂な説明になってしまう訳です(「奏法の違い」が「楽器の違い」ではない事は以前に指摘した通りです)。

 また『オーケストラのグローバル化に伴ってバソンは衰退した』という意見もネット上で散見しますが、バソンをフランス固有の文化だと思っている時点ですでに違うと思いますね…
 

 バソンなんて実際には見たことも聴いたこともない人がほとんどなのに、偏ったイメージだけが妙に一人歩きしてる感じがします…すでに都市伝説なんですかね?(笑)
 
 

2014年6月27日金曜日

フランス式=フランス流ではない(1)

 オケや吹奏楽にバソンなんぞを持って行くと、よくこんな事を言われます…
 
『こだわりですね』
『フランスものお好きなんですね』

 う~ん、説明するのも面倒なんでいつも笑って誤魔化してしまうんですが、小人的には特にこだわりも思い入れも無いんですよね~(汗) 確かに「バソン」をネットで検索すると

『今や音色にこだわるフランスの一部のオケでしか使われていない』

…といった記述を見かけます。これ、多分正しくないんですけど、ファゴットに対するバソンの構成比と『のだめ』のポール君のイメージでこういう風に思われてしまっているようです。
 
 
 Youtubeを探せば「フランス人でないバソンの演奏」がたくさんアップされています。いくつか紹介しておきましょう。
 
Cecil James氏(イギリス)

James家はお父さんが王立音楽院の教授だったり、おじさん達がロンドン響やBBC響に居たりするイギリスのバスーン一族だったそうです。ご本人もフィルハーモニア管やデニス・ブレイン木管五重奏で活躍されました。お父さんがバソン吹きだったので、息子も自然とそうなったようです。

ちなみにこの録音、言われなければバソンって判らないと思います。ファゴットとバソンの聴き分けって、世の中で言われてるほど簡単ではありません。

Howard Dann氏(イギリス)

Cecil James氏は一世代前の方なので、現役の方も紹介しておきますね。
 
Luc Loubry氏(ベルギー)

これも動画が付いてないのでバソンと判りにくいですね。
一応、この人がバソン吹きだという証拠を…↓

右がLoubry氏。
ベルギーはフランス語圏とも言えなくはないので微妙なトコなんですが、音楽史的にはフランドル楽派「からの~」ということで、一応フランス外として挙げさせていただきました。
 
Jim Morgan氏(アメリカ)

伴奏は明らかにアマオケですが、Morgan氏はプロのようです。アメリカ人のバソンってちょっとイメージ沸きませんが、例えばボストン・シンフォニーの歴代首席奏者の内、何人か(1901-1905 A.Debuchy、1918-1936 A.F.Lausなど)はフランスから来たバソン奏者なので、アメリカにお弟子さんの系統があってもおかしくありません。(→出典:The Stokowski Legacy

 ちなみにDebuchy氏はかのEugène Jancourtのお弟子さんだそうで、よくアメリカからJancourt式のバソンが売りに出るのと何か関係があるのかもしれません。小人のバソンも実はアメリカの方から譲って頂いたものです。前のオーナーさんはアーミーバンドで吹いてたそうなので、フツーにスーザとかジョプリンとか演ってたんでしょうね。
 
 
 ま、これくらい出しとけばバソンが「もはやフランスにのみ生息する絶滅危惧種」でも「フランス音楽専用ツール」でもないとご理解いただけると思います。皆さんフツーに<バスーンとして>吹いておられますよね!?
 
 ちなみに冒頭に戻って「なぜ小人はバソンを吹いているか?」ですが、手持ちの3本の楽器の中でクランポンが一番マシだから(あとの2本はファゴット)、という単純な理由です。誰かモーレンくれたらあっさり乗り換えますよ(笑)。

まあ「多数派が嫌いなひねくれ者だから」というのも少しはありますけどね(笑)
 
 

2014年6月18日水曜日

シートストラップ、作ってみました

 ファゴ吹き以外にはどうでもいい話なんですが、ファゴットのストラップにはシート、ネック、ショルダー、ハーネスなど、いろんな種類があります(バロック時代には「上着のボタンに引っ掛ける」なんて方法もあったそうですが、現代の服装と楽器の重さじゃムリですね)。こんなに種類があるのって、みんな楽器持つのに苦労してる証拠なんでしょうね。重いし、斜めでバランス悪いし…(泣)
 
 小人はたまたま最初に買った楽器にネックストラップが付いてたのでそのまま何も考えずにネックストラップ派なんですが、オケの相方さんがシートストラップ派なのでお借りして吹いてみた事があって楽器の重さがほとんど掛からないことや楽器が安定する事は知ってました。
 
 ここんとこ急にシートストラップに変えたいと思う理由がありまして…
 
①最近、肩こり・首こりがヒドイ(笑)
 ②バソンを吹いてて楽器が安定しない

 ただ、シートストラップって買おうにもそこらの楽器屋さんじゃ置いてないし、ネットで見てもそこそこ高いし…今日はヒマだったので、自作にチャレンジしてみました。
 
左から:試作品1号、2号

 シートストラップには受けがカップ式とフック式の2種類がありますが、クランポンにはフック穴が無いのでカップ式で試作してみました。市販品は大抵レザーでできていますが、レザークラフトなんて出来る訳無いのでまずは布で形を考えてみます(試作品1号=テストなのでテキトーに薄い布で作ってます)。
 
 試奏してみると布製のカップでは楽器が安定しない事が判明。次にベルトのみで楽器をホールドするタイプを作ってみました(2号=綿テープ製)。外周側を面ファスナーで固定するようにしたのですが、これがなかなかいい感じ⇒このタイプでいくことに。
 
これが完成品(材料:アクリルテープ、面ファスナー)
サイズ調整できるので、もちろんファゴットにも使えます!

 実用には充分な仕上がりになりました!ちなみにひとりで作ったような書き方をしてしまいましたが、小人は「ああして、こうして」言ってただけで、実際にミシンがけして作ってくれたのはヨメはんです。材料も全てヨメはんの手持ちで作ったので、材料費もゼロでした。今度、美味いもんでも食わさねば…