2014年1月24日金曜日

ベニヤの笛、粘土の笛~100年後のために

 ドルチェさんからDMが届きました。パラパラとページをめくっていて目が止まったのがこの記事。

その名も「トスカーナの琥珀」!

 「へえ~、ローズウッドのフルートが出るんや」なんて思いながら読んでいると、『木材にはアメリカン・ハードウッドを使用』『この木材を薄く板状にし、それを特殊製法加工で角材にする』って…ざっくり言うとベニヤ製ですか!?しかも「アメリカン・ハードウッド」なんて聞いたコト無いし…
 
 調べてみるとアメリカン・ハードウッドって特定の木の名前ではなくて、文字通りアメリカに分布する“堅い木”の総称のようです。知ってる名前でいうと、ウォールナットとかチェリーとかオークとかシカモアとか…楽器用というよりは家具用や建材のイメージですね。

 今まで楽器には使われていなかった木で楽器が作れるようになったってスゴい事だと思います!さすがスプーンからフルートを作る技術力はダテじゃありません(笑)
 
 
 新素材と言えば1994年に登場したクランポン社の“グリーンライン”。こちらはアフリカン・ブラックウッドを一度粉砕して固めたものだそうです。

クランポンのHP、歴史のページより

 クランポンのHPで新素材についての説明はここだけですね。画期的な事をしている割にはその趣旨が宣伝されていません。もう登場から20年も経って“常識”なのかもしれませんね…パウエルがベニヤならこちらは粘土ってトコでしょうか(土じゃないけど)。最近は中国製の楽器にも同様の素材のものがあるようです。
 
 
 これらに共通しているのは「近い将来、伝統的な材料が入手できなくなる」という危機感だと思います。既にブラジリアン・ローズウッドはワシントン条約で輸出入が禁止されてしまいましたし、紫檀やココボロ、ホンジュラス・ローズウッド等も附属書IIに掲載されて許可制となっているようです。バソンは通常ローズウッドで作られますので、材料が手に入らなくなったら「カエデで作るぐらいならファゴットでイイや」なんてことになってしまうかも…(汗)
 
 今、我々がしなくてはならないのは、このような新しい試みに「いいね!」してあげる事ではないでしょうか。音色の良し悪しの判断って、どうしても過去の経験(=伝統的な材料で作られた楽器の音色の記憶)によるので「やっぱ天然モノじゃないと~」とか思ってしまいがちですが、そんな事を言っていたら笛吹きは生態系を破壊する極悪人の烙印を押されてしまうことでしょう!
 
 
どうか100年後にも楽器を演奏する楽しみが残っていますように…


追記:
シュライバー/クランポンのカタログによるとバソンBC5613の素材は「リオ・パリサンダー」であると書かれていますが、これは正に附属書Ⅰに記載されている「ブラジリアン・ローズウッド」と同じものです(学名が同じdalbergia nigra)。輸入できなくなってしまうんでしょうか???
 
追記2:
ローズウッド<類>については2019年11月26日よりワシントン条約附属書Ⅰから外れたようですが、「dalbergia nigraは従前の輸出入手続が必要」とも書かれています。何回読んでも難解で「ニホン語ムズカシネー何言ウカ全然ワカラナイヨー」状態です…(汗)
是非、ご一読下さいませ↓
 
 

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