先日、つのふえ様より「底穴にキーをつけたリコーダーが欲しい」というコメントをいただきました。小人も全く同感なのですが、リコーダーを吹かない方には???な話だと思いますので、少し解説しておきます。
リコーダーには普通キーが付いていませんが、それはキー無しでも音域内の全ての半音階を吹く事ができたからで、ある意味『完成された楽器』なんですね。ところがそんなリコーダーにも1つだけ「鬼門」と言える音がありまして、それが高音域のfisなんです。有名どころではバッハのブランデンブルク協奏曲第4番にこの音が数回出てきます。
第1楽章より この部分を吹くためには普通 0---45-- (0はサミング)という指を使いますが、この指使いはその下のeやdからスラーで上がる時にしか使えず、しかも吹き伸ばすと音が外れる、楽器によっては出ない、という中途半端な指使いなんです(ある後輩はこの曲を演る時にいつも小人の楽器を借りにきます。彼女の楽器では出ないそうです)。
どんな楽器でも正しい音程が出て、しかも伸ばせる指使いとしては 01-34-6-8 (0はサミング)という方法が知られていますが、ここで言う「8」とは膝で底穴をふさぐ事で、座奏ならともかく立奏の場合は非常にやりにくく格好も悪いものになりますので、これをふさぐ為のキーがあればと~っても便利なんです!さらに底穴を半分ふさぐ事によって音域を半音だけ伸ばす事もできるんです。(以上、長い解説ですいません…)
『Carl Dolmetschのリコーダーにはフット・ジョイントに“F#''キー”をつけたものがある。やや楽器全体の響きをそこねるが、F#''とB♭''だけはこのキーで完全な音程が得られる。しかもキーの助けを借りて低いEまでリコーダーの音域を拡張することにも成功している』 (ロウランド・ジォーンズ「リコーダーのテクニック」p.144 音楽之友社)
な~るほど、膝でふさぐ代わりにキーを付けた人がいるのか…という事で、ネットで検索してみるとこんな写真を発見しました。
中央がCarl Dolmetsch氏 この写真に写っているリコーダー、2本共足部管にキーがついてますね。Dolmetschといえば現在でも英国でリコーダーメーカーとして知られています。それならとHPを捜してみると…ありました!オプションで底穴をふさぐキーを付けてくれるようです。
Dolmetsch online
アルト用が£282.00だそうです なるほど。足部管の広がった部分を切り欠いてキーを取り付ける訳ですね。つのふえさん、いかがでしょうか?
あと、ネットを検索していたらこんな方法も見つけました!左手の小指を使うとはなかなか考えてますね。ただスライド式って運動性はどうなんでしょうか?
Music & Recorder Innovations by Craig Carmichael
これって、モーレンのモダンリコーダーですよね!? ここまですると、もはやリコーダーじゃないような気が…先のジォーンズ氏はこんな笑い話を紹介しています…
『むかし、ひとりの熱心なハープシコード作りがいて、たえず楽器の改良ということに全力を傾けていた。ところがもしかれの追求がどこまでも続けられていったとしたら、もはやハープシコードではなくなって、ピアノになってしまうだろう。』( 前掲書 p.154 )