千秋先輩によるファゴットとバソンについての説明がYouTubeにアップされてました。ポール君がバソンでマルレのオーディションに挑むシーンですね。
『フランス式バソンとドイツ式ファゴット。キーも多く、完成度が高いファゴットに比べてバロック時代からほとんど変わっていないバソンはキーも少なくてコントロールも難しいが、鮮明で豊かな表現力を持っている。しかし、今世界中のオケの主流はファゴット。ウチのオケも今期からファゴットに変わった。』 by 千秋先輩
以前、ウィキペディアのバソンの説明については意見を述べさせてもらいましたが、今日は千秋先輩にツッコミいれてみたいと思います(笑)
1.バソンはホントにキーが少ないのか?
これ、良く言われますが『ウソ』です。手持ちの楽器で数えてみたところ、全く同じでした。もちろん楽器によってキーの数は微妙に違うので一概には言えませんが、バソンの方が明らかに少ないという事はありません。
バソンの右手奏者側があまりにもシンプルなのでそんなイメージになってしまったんでしょうが、逆に左手客席側はファゴットの方がよっぽどシンプルに見えます。右手客席側と左手奏者側はほとんど変わんないですね(下の写真参照)。
左:Cello&Coo Fg-2(22キー) 右:Buffet Jancourt式(22キー) (緑はバロックファゴットにある4つのキー) |
結べないキーについては番号を振って次に解説します。仲良く5個ずつですね!
ファゴット(ヘッケル式)が旧来の楽器を“革命的に”リフォームした結果であるのに対し、バソン(ビュッフェ式)はバロックファゴット→クラシカルファゴットという発展の延長線上にある楽器です。そのため旧来の楽器のDNAを色濃く残している事は否定しませんが、バロックファゴットとは明らかに違うものです。
2.キーが多いと完成度が高いのか?
☆ファゴットにあってバソンに無いキー
①Low-Hキー:バソンにはLow-BとLow-Cを同時に押すとLow-Hがでるという、凄いギミックが付いているのでこのキーがありません。これに対してファゴットは音1つにキー1つが割り当てられており、キーは多いのですが原始的です。
②Bキー:これは親指側にある方が絶対便利ですね。
③Eキー:バソンは指穴が小さいので普通キーは付いていません(セルマーにはキー付のもあり)。
④As替キー:替えキーなので、入門機には付いてないのもあります。
⑤Fis替キー:B-Gesのスラーなどに必須、フラット系の多い吹奏楽には欠かせません。バソンではBに「123 4-6 E(Fis)」という替え指を使えばクリアできます。
☆バソンにあってファゴットに無いキー
⑥High-F:アマオケでは使いませんが…
⑦High-E:同上。高級なファゴットには付いている場合も。
⑧Esキー:ファゴットは普通クロス・フィンガリングですね。トリルキーとして付いてる場合も。
⑨f-gトリルキー:第3オクターブ専用。現代のバソンではここに第2ウィスパーキーが付いてます。
⑩F替キー:Jancourt式の特徴の1つで、現行のバソンには付いていません。低音域のF-Asスラーに使います。ファゴットではAs側に替キーがあるので不要ですね。
こうやって見てみると、基本的なキー以外は「特定の不便」を解決するために付けられている事がわかります。つまりキーが多いという事は不便が多い裏返しでもあり、楽器の「完成度」とは比例しません。
そういう意味で「完成度」を語るなら、最強の楽器はバロックリコーダーだと思います。だってキー無しでほとんど全ての半音階とトリル、スラーを演奏できるんですから!(笑)
そういう意味で「完成度」を語るなら、最強の楽器はバロックリコーダーだと思います。だってキー無しでほとんど全ての半音階とトリル、スラーを演奏できるんですから!(笑)
3.バロック時代からほとんど変わっていないのか?
ファゴット(ヘッケル式)が旧来の楽器を“革命的に”リフォームした結果であるのに対し、バソン(ビュッフェ式)はバロックファゴット→クラシカルファゴットという発展の延長線上にある楽器です。そのため旧来の楽器のDNAを色濃く残している事は否定しませんが、バロックファゴットとは明らかに違うものです。
☆ビュッフェ式
・材料は主にローズウッド
・Low-Bの音穴は常時「閉」
・低音域のキーに連動システムあり
・キーは20個以上付いている
・ウィスパーあり
☆バロックファゴット
・材料は主にメープル
・Low-Bの音穴は常時「開」
・低音域のキー(Low-D、Low-B)は単独で作動
・キーは4~8個
・ウィスパーなし
さあ、どこが「ほとんど変わっていない」のか教えてもらおうじゃありませんか!
「ダブルリード使う」とか「ピッチが悪い」とかはダメですよー!!!