2010年5月7日金曜日

穴があったらふさぎたい(笑)

 先日、つのふえ様より「底穴にキーをつけたリコーダーが欲しい」というコメントをいただきました。小人も全く同感なのですが、リコーダーを吹かない方には???な話だと思いますので、少し解説しておきます。
 
 リコーダーには普通キーが付いていませんが、それはキー無しでも音域内の全ての半音階を吹く事ができたからで、ある意味『完成された楽器』なんですね。ところがそんなリコーダーにも1つだけ「鬼門」と言える音がありまして、それが高音域のfisなんです。有名どころではバッハのブランデンブルク協奏曲第4番にこの音が数回出てきます。

  

第1楽章より
  
 この部分を吹くためには普通 0---45-- (0はサミング)という指を使いますが、この指使いはその下のeやdからスラーで上がる時にしか使えず、しかも吹き伸ばすと音が外れる、楽器によっては出ない、という中途半端な指使いなんです(ある後輩はこの曲を演る時にいつも小人の楽器を借りにきます。彼女の楽器では出ないそうです)。
 
 どんな楽器でも正しい音程が出て、しかも伸ばせる指使いとしては 01-34-6-8 (0はサミング)という方法が知られていますが、ここで言う「8」とは膝で底穴をふさぐ事で、座奏ならともかく立奏の場合は非常にやりにくく格好も悪いものになりますので、これをふさぐ為のキーがあればと~っても便利なんです!さらに底穴を半分ふさぐ事によって音域を半音だけ伸ばす事もできるんです。(以上、長い解説ですいません…)
 
 
『Carl Dolmetschのリコーダーにはフット・ジョイントに“F#''キー”をつけたものがある。やや楽器全体の響きをそこねるが、F#''とB♭''だけはこのキーで完全な音程が得られる。しかもキーの助けを借りて低いEまでリコーダーの音域を拡張することにも成功している』
(ロウランド・ジォーンズ「リコーダーのテクニック」p.144 音楽之友社)
 
 
 な~るほど、膝でふさぐ代わりにキーを付けた人がいるのか…という事で、ネットで検索してみるとこんな写真を発見しました。
 

中央がCarl Dolmetsch氏
 
 
 この写真に写っているリコーダー、2本共足部管にキーがついてますね。Dolmetschといえば現在でも英国でリコーダーメーカーとして知られています。それならとHPを捜してみると…ありました!オプションで底穴をふさぐキーを付けてくれるようです。
 

Dolmetsch online
 
 

アルト用が£282.00だそうです
 
 
 なるほど。足部管の広がった部分を切り欠いてキーを取り付ける訳ですね。つのふえさん、いかがでしょうか?
 
 
 あと、ネットを検索していたらこんな方法も見つけました!左手の小指を使うとはなかなか考えてますね。ただスライド式って運動性はどうなんでしょうか?
 

Music & Recorder Innovations by Craig Carmichael
 
 

これって、モーレンのモダンリコーダーですよね!?
 
 
 ここまですると、もはやリコーダーじゃないような気が…先のジォーンズ氏はこんな笑い話を紹介しています…
 
『むかし、ひとりの熱心なハープシコード作りがいて、たえず楽器の改良ということに全力を傾けていた。ところがもしかれの追求がどこまでも続けられていったとしたら、もはやハープシコードではなくなって、ピアノになってしまうだろう。』
( 前掲書 p.154 )
 
  

3 件のコメント:

tak1 さんのコメント...

はじめまして tak1 と いう者です。
楽譜もよめないくせに リコーダーとトラベルソで遊んでいます。

なつかしい写真ですね。
サー・カール ドルメッチが来日したのは 1974年 3月でした。
ドルメッチの楽器を販売する 銀座山野楽器主催の リコーダークリニックが
31日 山野の4Fホールでありました。 それを友人と観ています。
ニコン・サロンを観たついでに 楽器屋を覗くのが いつもの行動でした。

写っているもう一人の男性 伴奏の ヨゼフ サクスビー ですね。若いなぁ。
来日のときは背中が丸くなりかかっていました。
もう一人の女性、 わかりません。

クリニックの後には 彼の演奏を聴くことができました。
小さな女の子の演奏したビバルディのソナタを、
私はコレを知らなかった、 と言った後に 初演をやってくれました。
ついでに ドルメッチのオプション品の「トーン・プロジェクター」の
実演も。おお、大きな音が聞こえる、と 驚いたもんです。

東海チェンバロの 第1号品での 試演もありました。
値段 確か、 \198,000.でしたね。

つのふえ さんのコメント...

おお、ありがとうございます!!
やっぱり、リコーダー吹きはどこの国でも同じことを考えるものなんですねぇ。

ドルメッチがそんなオプションを用意しているのは知りませんでした。
値段も高いものではないし欲しいのですが、ドルメッチは楽器そのものが高価ですから厳しいです。
でもこの値段って、フルートのEメカをあとからつけたりするより全然安いですよね。

ただ、楽器が重くなるのは避けられませんね。
これはリコーダーのウリのひとつである「軽量で手軽」を損なうことになります。
あと、左右の重さのバランスが変わるとか。
…まぁ、こういう改造を行うということはよほどリコーダー大好きでしょうから、大して影響はないのでしょうか。

大管小人 さんのコメント...

>tak1様
ようこそいらっしゃいませ!
生ドルメッチをお聴きになったとは羨ましい限りです。小人にとってのドルメッチ氏は、楽譜の冒頭にたった1行…
“to Carl Dolmetsch”
神様のような存在です。
左の女性の笛に「トーン・プロジェクター」付いてますね。ドルメッチ社ではもはや作ってないようです…
 
>つのふえ様
参考になりましたでしょうか?
ドルメッチ社の笛は1度だけ試奏した事があるのですが、値段の割にはスカみたいな個体でした。
ところでこのオプションキー、右小指で押さえる仕様ですからfisは出せても低いeはダメですよね?ジォーンズ氏のコメントは正しいのでしょうか!?